朝6時。霧の奥で芝が息をしていた。
深い丘陵地帯に広がる45ホールの壮大なキャンバス。
埼玉県毛呂山町に佇むオリムピックナショナルゴルフクラブ(オリムピックナショナルGC)は、単なる大規模なゴルフ場ではありません。それは、日本のゴルフ史における「二つの名門の物語」が統合され、未来へと向かう舞台なのです。
私、三浦拓真は、長年ゴルフ場の舞台裏を取材してきました。その経験から言えるのは、「芝は嘘をつかない」ということ。そして、その芝目には、土地の記憶、設計家の思想、そしてそこで働く人々の誇りが刻まれているということです。
この記事では、オリムピックナショナルGCがどのようにして誕生し、なぜ今、これほどまでにゴルファーを惹きつけているのか。その隠された歴史と、世界的な巨匠たちが仕掛けた戦略の奥深さを、「芝の上で、人の心を読むライター」の視点から紐解いていきます。
結論から申し上げましょう。この記事を読み終えた後、あなたのオリムピックナショナルGCでのラウンドは、間違いなく「歴史との対話」へと変わります。スコアだけではない、ゴルフの“本当の豊かさ”を共に探りましょう。
オリムピックナショナルGCの名前を聞いて、そのスケールの大きさに圧倒される方は多いでしょう。しかし、この壮大な45ホールのコースが、元々は二つの異なるクラブだったという事実は、意外と知られていません。
このクラブが持つ「二つの顔」の歴史を知ることが、コース攻略の第一歩となります。
オリムピックナショナルGCは、2017年10月5日に新たなスタートを切りました。
そのルーツは、
これらが経営統合によって一つとなり、「オリムピックナショナルゴルフクラブ」という名前で、首都圏有数の大規模ゴルフ場として生まれ変わったのです。
これは、単にホール数が増えたという話ではありません。それぞれ異なる設計家、異なる歴史、異なるメンバー文化を持つ二つのクラブの「魂」が、一つの場所で共存することを選んだ、ゴルフ界にとって画期的な出来事でした。
「ナショナル」という言葉をクラブ名に冠した背景には、強い意志が込められています。
それは、単に地域の名門であることに留まらず、「世界に通用するナショナルクラスのゴルフ場を目指す」という、クラブの新しい哲学を表明しています。
バブル崩壊後の厳しい経営環境や、ゴルフ人口の変動といった時代の波を乗り越え、巨大なスケールと高品質なサービスを両立させることで、新たなブランド価値を創造しようという決意の表れなのです。
この統合は、日本のゴルフ場経営における新しいモデルケースとしても、大きな注目を集めました。
EASTコースのフェアウェイを歩くと、時を重ねた貫禄と、マウンドを多用した美しい造形に心惹かれます。
このコースを設計したのは、アメリカの世界的設計家であるペリー・ダイです。
ペリー・ダイは、兄のピート・ダイ(彼の代表作にPGAツアーの舞台となるソーグラスなど)と並び称される巨匠です。彼の設計は、自然の地形を最大限に活かしつつ、プレーヤーに視覚的なプレッシャーを与える戦略的なハザード配置が特徴です。
EASTコースには、ダイ設計の特徴的な要素が随所に見られます。
彼の設計は、「努力が報われる道」であるはずのフェアウェイを歩く私たちに、常に「知恵と勇気」を試す問いかけをしてきます。これが、ダイのコースの面白さであり、ゴルファーを魅了し続けるレガシーなのです。
一方、WESTコースは、リニューアル時に世界的な評価を固めるジム・ファジオ氏が監修を務め、モダンでダイナミックなレイアウトへと進化を遂げました。
ダイナミックでありながら、高低差を最小限に抑え、アンジュレーション豊かなグリーンと計算されたハザード配置を持つのが、「ファジオマジック」の核心です。
WESTコースは、9ホールずつに分けられた3ループ(アザレア、カメリア、シバザクラ)の27ホールで構成されています。
大規模なコース全面リニューアルは、まさに「土地のポテンシャルを最大限に引き出す」という挑戦でした。
ファジオ氏は、この土地が持つ広大な敷地と地形を活かしながら、
という、それぞれに異なる戦略性を持たせました。
WESTコースの代名詞とも言えるのが、「シバザクラ1番」のティーグラウンドに立つ時に感じる「驚愕の打ち下ろし」です。
高低差約50メートルから見下ろす雄大なフェアウェイは、まさに絶景。休日にクラシックカメラで早朝の霧がかかるグリーンを撮るのが好きな私にとって、ここはシャッターチャンスの宝庫です。
しかし、美しさに見とれていると、思わぬ落とし穴が待っています。
この一打で、WESTコースの持つダイナミックな個性が、プレイヤーの心に強く刻まれるのです。
EASTとWESTの統合は、単なるコース数の増加以上の、圧倒的な価値をゴルファーにもたらしました。それは、世界的な巨匠二人の設計思想を、一箇所で体感できるという「唯一無二の体験」です。
オリムピックナショナルGCは、関越自動車道や圏央道からのアクセスが良く、都心からでも比較的短時間で到着できる立地の良さも魅力です。
このアクセスと、全45ホールという圧倒的なスケールが、高いコストパフォーマンスを生み出しています。
平日は特に、このクオリティのコースをこの価格で楽しめるのは、関東圏では非常に貴重な体験です。
統合とリニューアルは、コースだけでなく、クラブハウスや付帯施設にも及んでいます。
エントランスからフロント、そしてホームホールの背景に新設された水景など、クラブハウスの空間設計は、プレーヤーの高揚感を高めるドラマチックな演出が施されています。
また、23打席の練習場も開放的で打ちやすいと評判です。
ゴルフ場は単なるプレイの場ではなく、「人と自然、努力と偶然が交わる舞台」だと信じている私にとって、こうした細部にわたる「おもてなし」の心遣いは、スコアには測れないゴルフの豊かさを構成する重要な要素だと感じています。
「芝を盛らない、嘘を削る」を信条とする私にとって、この二つの名門が一つになった裏側にある「人の物語」は、最も興味深いテーマです。
異なる歴史、異なる運営哲学、そして異なる誇りを持つ二つのクラブが統合される時、現場では少なからず文化的な摩擦が生まれます。
旧エーデルワイスGCで働いていた人と、旧鶴ヶ島GCで働いていた人が、一つのクラブハウス、一つの経営理念の下で働く。それは、まさに「二つの芝目」を一つに揃えるような、繊細で根気のいる作業だったはずです。
私が取材でゴルフ場を訪れる際、小さなクラブハウスでも、そこで働く人たちの「誇り」を見つめることに重きを置いています。統合後のオリムピックナショナルGCのスタッフは、この大規模な環境を維持管理し、二つの歴史を尊重しながら、新しい「ナショナル」という哲学を体現しているのです。
彼らは、ペリー・ダイとジム・ファジオという世界的な巨匠の設計を、毎日、風や光、そして季節の変化から守り育てています。その努力の結晶こそが、私たちが歩く「緑の絨毯」(ベント芝)なのです。
ゴルフは自然と対峙するスポーツですが、その舞台は「人」の手によって守られています。
「風の向こうに、人の物語がある」
このオリムピックナショナルGCという舞台には、二つの名門の過去の物語、そして巨匠たちの思想、さらにそれらを未来へつなぐ現場スタッフの物語が、複雑に絡み合っています。
それは、まるで人生のようではないでしょうか。過去の経験や、時に予期せぬ出来事(統合)が、今の自分というコースを作り上げている。私たちは、そのコースを、一打一打、真摯に受け止めながら進んでいくのです。
オリムピックナショナルゴルフクラブは、旧エーデルワイスGCと旧鶴ヶ島GCの統合によって誕生した、全45ホールの壮大な歴史の舞台です。
改めて、この記事で触れたポイントを整理しましょう。
「芝目と文は同じ、読む角度で印象が変わる」
私は、このクラブハウスを後にし、コーヒーの香りを楽しみながら、そう強く感じました。このクラブを訪れる際は、ぜひ、ティーグラウンドに立った時、ただ打つだけでなく、足元の芝の下に眠る二つの名門の歴史、そして巨匠たちのメッセージに耳を傾けてみてください。
歴史を知ることで、あなたはコースへの畏敬の念を抱き、風を読むことの意味を深く理解するでしょう。
スコアでは測れない、ゴルフの“本当の豊かさ”は、あなたのその一歩一歩に隠されています。次は、あなた自身のゴルフ時間に、どんな新しい物語を刻みますか?
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最終更新日 2025年10月13日 by ixsrvn
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