生産技術のコンサルティングをしている宮原と申します。
電子部品メーカーの生産技術に14年、その後は装置商社の技術営業を経て独立しました。
基板の実装ラインで接着剤やグリスの塗布工程をずっと担当していたので、ディスペンサのカタログは数えきれないほど眺めてきました。
若い頃は、吐出量の数字だけ見て「うちの塗布量に入ってるからOK」と判断し、導入後にバラついて青くなったことが何度もあります。
今回は、私がカタログを開いたときに必ず確認している項目を、優先順位の高い順に整理してみます。
スペック表の数字より先に、どういう原理で液を計っている装置なのかを見ます。
ここで装置の性格がほぼ決まってしまうからです。
大きく分けると、次の3系統になります。
重要なのは、エアシリンジ方式が時間で量をコントロールしている点です。
同じ時間だけ押しても液が硬くなれば出る量は減る、つまり液温が変われば吐出量も変わります。
一方の容積計量方式は、ピストンの径とストロークで量が決まるため、粘度が変動しても吐出量がぶれにくい構造です。
方式ごとの原理は、ディスペンサーという装置の仕組みを解説したページが図解込みで分かりやすいので、選定前に一度目を通しておくと理解が早いです。
なお、方式の呼び分けはメーカーごとに違います。
カタログを横並びで比べるときは、方式名ではなく原理で読むようにしています。
次に見るのが、この2つです。
吐出量範囲は「0.0024〜0.423ml」のようにレンジで書かれています。
私が気にするのは上限より下限のほうです。
微量塗布の可否は下限が決めるので、ここが自社の要求より大きい機種は、どうやっても使えません。
使用可能粘度は「1〜300,000mPa・s」「1〜1,000,000mPa・s」といった表記になります。
ただしこの数字、そのまま鵜呑みにはできません。
液体の粘度は温度で変わります。
温度が上がれば粘度は下がるという反比例の関係です。
自社の材料のカタログに載っている粘度が20℃で測ったものなのか25℃なのかで、話が変わってきます。
測定方法はJISで規定されていて、JIS Z 8803(液体の粘度測定方法)に細管粘度計や回転粘度計による手順がまとまっています。
現場では、冬場に室温が下がって塗布量が減り、不良率が上がることが普通に起きます。
装置側の温調機能の有無まで含めて見ておくと、後で慌てずに済みます。
性能に関係ないので飛ばされがちですが、私はここを必ず確認します。
導入コストと工期に直結するからです。
「ドライエア」という一言は軽く見られがちですが、圧縮空気に含まれる水分や油分は吐出品質と機器寿命に効いてきます。
圧縮空気の汚染物質についてはJIS B 8392-1(圧縮空気-汚染物質及び清浄等級)で清浄等級が定められているので、工場側のエア環境と突き合わせておきたいところです。
電源についても、200Vの三相が必要なのに気づかず、後から電気工事の費用が乗ってきたという話は珍しくありません。
これが一番お伝えしたいことです。
多くの装置カタログの仕様表には、小さく「数値は理論値です」といった注記が入っています。
使う樹脂や作業環境で変動する、という意味です。
そして選定に本当に必要な情報のうち、いくつかはカタログには一切出てきません。
メーカーのテスト依頼フォームを見ると、こうした項目の入力を求められます。
逆に言えば、メーカー側が選定に必要だと考えている情報がそこに並んでいるわけです。
ですから最終判断は、実液でのテストに委ねるのが確実です。
装置メーカーの多くはテストルームを持っていて、実機での試し打ちに応じてくれます。
なお吐出精度を突き詰めるなら、計測のトレーサビリティという考え方も押さえておくと話が早くなります。
国内の計量標準については産総研の計量標準総合センター(NMIJ)の情報が参考になります。
カタログを読む順番を、もう一度整理しておきます。
カタログはあくまで候補を絞り込むための道具です。
数字が合っているように見えても、自社の液を流したら思ったように出ないことは本当によくあります。
面倒でもテストは受けておく。
それが結局いちばんの近道だと、私は思っています。
最終更新日 2026年8月3日 by ixsrvn
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